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ココロのメルマガ小説『お婆ちゃんの金魚 後編』志賀内泰弘
 ★第5回★「たった一言でコンテスト」の締切は10月末です!
ぜひ、投稿してください♪ 

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[ 1 ]ココロのメルマガ小説『お婆ちゃんの金魚 後編』志賀内泰弘
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「片づけが終わったら、飲みに行こうか」
「え?」
「そこで教えてやるよ・・・山岸のお婆ちゃんのこと」

リョウは意味深な店長の言葉に首を傾げながら、駐車場の掃除を始めた。

山岸ミネは、今年の秋が来ると78歳になる。
この町で生まれ、この町に嫁ぎ、この町からほとんど出たことがない。

今は一人暮らしだが、以前は夫と、息子の3人家族だった。
息子は、稀に見る秀才だった。野球部でもレギュラーで、甲子園を目指した。
夫婦には自慢の息子だった。

東京の大学に入って2年目の夏。
お盆の帰省のため、関西に住む友達2人と一緒に、車で出発した。

高速道路を愛知県に入った頃のことだった。
突然、前を走っていたトラックがカードレールに激突した。居眠り運転だった。
そこへ、息子の乗った車も突っ込んだ。3人とも即死だった。

もう、30年以上も前の話だ。
それ以来、夫と二人きりの生活だった。

息子の話は、あえて口にしないことにした。ミネも夫も。
どちらかが言い出したことではない。
口にすると悲しいだけだとわかっていたからだ。

初盆のとき、息子が幼い頃に好きだったカリントウを買って来た。
仏壇に供えようとすると、そこにはもう一袋のカリントウがあった。

夫も買って来ていたのだ。そんな暮らしが1年、また1年と過ぎ、
いつのまにかお爺さんとお婆さんになってしまった。

そして、一昨年の夏、夫は先に逝ってしまった。

心筋梗塞であっという間に。それまでは健康が取り柄だったので、
苦しんだ期間が短かったということでは、良い最期だったのかもしれない。

「そうそう、ユタカさんのチラシが入ってたけど、金魚すくいは今日だったわね」

誰に言うわけでもなく呟いた。
縁側には、小さな水槽があった。

3匹の金魚は、去年の夏、近所のドラッグユタカでもらったものだった。
麦茶を買いに行くと、何やら入口の前で子供たちがワイワイと騒いでいた。
覗き込むと、金魚すくいをしていた。

懐かしかった。まだ賢一が小学生の頃のことだ。
神社の夏祭りへ家族で出掛け、3人で金魚すくいをしたことを思い出した。
思わず、前の方へと割り込み、

「わたしもやらせてもらっていいかね」

と口にしていた。
店員は、ちょっと戸惑った様子だったが、

「いいよ、お婆ちゃん」

と言い、ポイを1つ差し出してくれた。

「いくら・・・」

と尋ねると、

「ううん、お婆ちゃん、コレ無料のイベントなんだよ」

と。なんだか嬉しくなり夢中で金魚を追った。でも、1匹もすくえなかった。
ポイが無残にも敗れてしまったのを見て、店員はビニール袋に3匹の金魚を入れてくれ、

「ハイ!お婆ちゃん、お土産だよ」

と渡してくれた。家に帰ると、小屋から昔使っていた水槽を捜しだし、
そこに水を張った。そして、3匹の金魚を放った。

何日か経つうち、知らぬ間に金魚に名前を付けて呼んでいた。
1匹は夫の賢太郎。1匹はミネ。そして、もう1匹は賢一。
それは亡くした息子の名前だった。

「おお、賢太郎さん・・・今日も元気だね。
 ミネさんともっと近づいてよ、寂しいじゃないの。
 賢一はよく食べるねえ・・・などと」

それが、いつしか毎朝の日課になっていた。

しかし・・・。
桜の咲き始めた頃、ミネは風邪をひいた。
3日ほど寝込んでしまったせいで、金魚の世話を怠った。

ずいぶん水が汚れていたので、替えてやらなくては、
と思っていたが身体が動かなかった。

「ごめんね、わたしが悪いのよ」

床上げをした朝、水槽を見て言葉を失った。
賢太郎と呼んでいた、真っ赤な金魚がプカプカと浮かんでいた。
ミネは、賢太郎をそっと庭の片隅に、そっと埋めてやった。
 
「賢一、今からユタカさんに行って、お父さんの金魚をすくってくるからね」

水槽の中で、賢一と呼ばれた黒い金魚が泡を一つ、プクッと噴き出した。
ミネには、何か言いたげな表情に見えた。

その横で、出目金のミネが楽しげに泳いでいる。
ミネはちゃぶ台から、ヨイショと言って立ち上がった。

《終わり》

※この物語は、岐阜県大垣市に本社を置く(株)ユタカファーマシーが
展開するドラッグユタカで実際にあったエピソードを元に小説化したものです。


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